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2.瀉下療法
3.催吐療法
4.滴鼻療法
5.浣腸療法
6.利尿療法
7.罨法
8.薬浴療法
9.塗擦療法
10.針療法
11.蓬灸療法
12.瀉血療法


チベット医学でいう催吐療法とは、薬剤を利用し、体内に停滞した食物や毒物を吐き出させることによって、疾病治療の目的を達する方法です。記録としては、西暦8世紀のチベット医学経典《四部医典》にその内容が述べられています。14世紀には、北派チャンバ・ナムジェチャプタン及び南派ソルカ・ニェムニドジェ等多くの歴代チベット医学者が、この療法に触れており、いまなお衰えていない不朽の療法です。



1.治療前準備
病気の状態によって2種類の準備があります。具体的方法としては、瀉下療法と同様ですが、急性の食物停滞、或いは不適切な飲食が原因による胃の機能不良、ペーケン病、ムープ病が胃部に発症した場合、油脂を常食し腹中の油脂分が多い患者等は、前準備を行う必要はなく、直接催吐剤を服用して構いません。



2.嘔吐促進法
(1)処方薬
主な薬材は、卵葉嚢吾、刺参(Morina alba Hand.-Mazz.)、ヒマラヤ大戟です。以上の三薬は、必ず砂地に生えたもので、春先の発芽した時に全草を採取します。

(2)服用方法
早朝の空腹時に服用します。服用後はすぐに口を漱ぎ、話をせず、暖かい衣服を着用し、身体が冷えないようにして座ります。服薬後すぐに吐き気をもよおした場合は、二度目、三度目までは我慢した後吐き出し、病原を全て排除します。吐き気を我慢することは三〜四度を最良とし、多すぎてはいけません。多すぎると病原が体内に残留する可能性があります。

(3)嘔吐促進法
療法を行った後、嘔吐した食物や毒物が少量の場合、卵葉嚢吾、刺参、ヒマラヤ大戟、水菖蒲、ジエンツァ、ヒハツ等を磨り潰し、お湯に少量のジエンツァを加えて内服します。この方法によってもまだ嘔吐が促進されない場合、鳥の羽や手の指等を使って嘔吐します。催吐剤は患者の状態と体質と病状を考えて服用し、嘔吐の回数を決定します。

(4)効果の基準
嘔吐の回数は8回を最良とし、6回ならまずまず、4回を普通とします。
嘔吐物の色は、水のような液体を最良とし、胆液状ならまずまず、痰のような液体を普通とします。
嘔吐量としては、2Lを最良とし、1Lならまずまず、0.5Lを普通とします。



3.治療後の処置
治療後、時によって激烈な嘔吐、または投薬量が多すぎたために嘔吐が止まらない場合があります。トルウィルンの合併症、胆汁の異常分泌、大量の胃液を吐く、肺出血等の不良反応があった場合、薬物が目に混入した場合、必ず以下のような処置を行ってください。

(1)トルウィルンの合併症
頭痛、特に太陽穴位の痛み、嘔吐物のない吐き気、意識昏迷、体のだるみ、視界混濁、耳鳴り等がある場合、百会、太陽穴、後セン、鎖骨、脊椎、前胸、中脛、足の裏、四肢関節等にバターにニクズクを加えたものを塗りマッサージし、体を温め、煙にいぶす。その後に牛羊の骨のスープを飲みます。

(2)胆汁の漏えい
症状としては黄色の液体を吐きます。デュッタ(Swertia mussotii Franch.)、サルチメト(Herpetospermum pedunculosum(ser.)Baill.)、ドゥモニョン(Holarrhena antidysenteriaca Wall.ex A.DC.)、紅花、苦菜、熊胆、紫草茸、茜、山礬葉(Symplocos paniculata(Thunb.)Miq.)の葉を煎じて服用します。或いはザクロ、熊胆、紅花を等分に磨り潰し内服する。もし症状が改善しない場合は、"チーパシャロン"(脈)の瀉血を行います。

(3)ペーケンムープの異常分泌
嘔吐時に出血が見られる、胆汁及び灰色の嘔吐物が見られる場合、亜大黄、水底石、すきの刃を冷やして当てます。或いは亜大黄の葉、山礬葉の葉、トチャハウ(Corallodiscus flabellatus(Franch.)Burtt.)を水で煮込んだものを当てます。或いはコエンドロ、紅花、石灰華、熊胆、“ブヒェジ(石斛)”を磨り潰したものを、冷めた沸かし水で服用します。

(4)肺出血
嘔吐物に血液が見られる。熊胆、朱砂、エンドウの花、大黄、白砂糖を磨り潰し内服します。また紫草茸、茜を煎じたものに、紅花、石灰華、甘草、肉桂、エンドウの花、熊胆を磨り潰したものを加え冷ました後内服します。

(5)薬剤が目に混入
嘔吐中に頭痛が見られ、両目が充血します。鼻尖、額脈部分の瀉血を行います。また顔に冷水を吹き付けます。



4.善後処理
基本的には瀉下療法と同様です。ルンが増大した者には、米の粥或いはツァンパの塩に炒めた塩を少量入れたもの、薄いお茶などを飲食します。身体の滋養に努めることによって、ルン病の発症も抑えることができ、体内に残留した薬剤、病原を排出することができます。その後は、除々に濃いお粥や脂身のついた肉のスープ等を増やしていきます。ルンの抑制や寄生虫病予防のため、安息香、ハマスゲ等を新鮮なバターと混ぜ、火にかけてその煙を鼻から吸い込みます。またジエンツァ水を一碗、日に二度鼻に点ずることによって体内に残留した薬剤を排除することができます。



1.適応症
消化不良、剣突腫瘍、胃鉄垢症(胃が鉄錆のような色になる症状)、中毒症、急性腹痛、血液と胆汁が胃に漏えいする症状、胆嚢下垂、頭部疾病、寄生虫病、食欲不振、特にペーケンチャボ(灰色ペーケン)やペーケンムープ(紫ペーケン)が胃に達する等の症状のペーケン病には、この催吐療法は有効であり、効果があります。



2.禁忌
虚弱体質、排尿障害、眼障害、痔、重度の肉類中毒者、腸内の寄生虫病、高齢者、子供、妊婦、ルン病患者は、この催吐療法を行うことはできません。



3.長所と短所
この療法を行うと、意識がはっきりとする、元気が出る、食欲が増進される、食べ物がおいしくなる、鼻水、痰等の排出物が濁らなくなる等の長所があります。逆に短所として、不良反応と病弊があります。(具体的な処置については上述部分を参照)



4.原理探求
《四部医典》によれば、“ペーケン、チーパ、ルン等の失調は、ペーケン・ニャクチェ(主に食塊を粉砕させる)が機能を発揮させることができず、チーパ・ジュチェ(主に廃棄物と栄養素に分解させる)の機能を停止させ、メニャム・ルン(胃熱を活性化し、血液による成熟を促す)の機能を阻害し、人体の正常な運行を妨げ、栄養素の消化吸収不良という症状を引き起こすとあります。このことから、胃中にペーケンが増えすぎると、胃中にあるルンの通り道を塞いでしまい、結果胃中に廃棄物が残留することになります。”廃棄物と栄養素をうまく分離することができないとなると、その廃棄物は栄養素の通り道に流入してしまい、結果として肝臓に廃棄物が残留し、それが漏れ出し、拡散することによって、各種疾病の病原となってしまうことになります。催吐療法は薬剤の作用を利用して、体内に残留した無用な食物と廃棄物を自然に排出し身体を自然の状態に戻し、ペーケン・ニャクチェ、チーパ・ジュチェ、メニャム・ルンの機能を回復させ、栄養素と廃棄物を分離し、バランスを戻すことで、疾病を治療するものです。



 

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